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東京高等裁判所 昭和47年(ネ)1106号 判決 1973年3月29日

控訴人 竹沢ヨシイ

右訴訟代理人弁護士 倉本英雄

被控訴人 藤田勇

主文

原判決を取消す。

被控訴人は控訴人に対し金一〇〇万円およびこれに対する昭和四三年一〇月三〇日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

この判決は仮に執行することができる。

事実

控訴代理人は主文と同旨の判決を求め、被控訴人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張および証拠の関係は、次のとおり付加訂正するほか、原判決事実摘示のとおりであるからこれを引用する。

一、控訴代理人の陳述

仮に本件土地の売主が被控訴人であったと認められないとすれば、左のとおり主張する。

1.本件土地売買契約は、訴外株式会社財務保全振興会(以下財務保全振興会という。)を売主として控訴人(買主)との間で締結されたものである。その際被控訴人は控訴人に対し右売主会社の債務について保証する旨約した。そして控訴人は同日(昭和四三年一〇月三〇日)代金一〇〇万円を右会社に支払った。

2.ところが、財務保全振興会は本件土地を含む二筆の土地を第三者に売却し、昭和四四年二月八日所有権移転登記を完了した。これにより右会社の本件契約の履行は不能となった。

3.よって控訴人は同年三月五日財務保全振興会に対し、一〇日以内に売買契約を履行するか一〇〇万円を返還するかの催告をしたが、右会社は応じなかった。そこで控訴人は同会社に対し昭和四七年四月一日本件売買契約を解除する旨通告した。

4.以上によれば、財務保全振興会は控訴人に対し、契約の履行不能にもとづく損害賠償もしくは契約解除にもとづく原状回復義務の履行として一〇〇万円を支払う義務がある。そして被控訴人は保証人として右と同一の義務を負うべきものである。

よって控訴人は被控訴人に対し、保証債務の履行として金一〇〇万円とこれに対する代金交付の日である昭和四三年一〇月三〇日から完済まで民事法定利率年五分の割合による利息の支払を求める。

二、被控訴人の陳述

1.原判決三枚目表一行目から三行目までを「同第三、四項の事実は認める。」と改める。

2.控訴人の当審における主張について1の事実は否認する。2、3の事実は認める。

三、証拠関係<省略>。

理由

<証拠>を総合すると、被控訴人は、昭和四三年秋頃財務保全振興会から宅地造成のための土地の購入方を依頼され、当時久保育雄の所有であった本件土地を含む請求原因1記載の二筆の土地を買受け、これを財務保全振興会に転売する旨の契約を締結したこと、他方桑原縫次は、その頃財務保全振興会の代表者である梅木兎江から右土地の買手を見つけて欲しいと頼まれ、控訴人に右土地を紹介したこと、そこで、控訴人は、同年一〇月三〇日右桑原、梅木と共に黒磯町に赴き、被控訴人を加えて現地を見分したうえ、右土地のうち本件土地一、〇〇〇坪につき現地で指示を受け、梅木からこれを代金坪当り三、〇〇〇円で売渡す旨の申込を受けたこと、控訴人はこれを承諾して本件土地を買受けることとし、被控訴人の事務所において右代金の内金一〇〇万円を被控訴人を介して梅木に支払ったこと、その際控訴人は被控訴人に対し、

「東京の人(梅木)は信用できないから、被控訴人が責任をもって貰わなくては困る。」と申し向けたところ、被控訴人は、「自分が全責任をもって迷惑はかけない。」と答えたこと、前記一〇〇万円の領収証である甲第一号証は、財務保全振興会を作成名義人とする領収書の用紙に同会社の代表者の記名捺印があるほか、藤田建設有限会社代表者として被控訴人の記名捺印が存し、これは右領収証作成に際し控訴人側から被控訴人も本件売買について責任を負うべきことを要求され、被控訴人がこれに応じて記名捺印したものであることを認めることができ、証人桑原縫次、控訴人および被控訴人各本人尋問の供述中右認定に反する部分は信用できず、他に右認定を覆えすに足りる証拠はない。

以上認定の事実によれば、本件売買契約は、財務保全振興会を売主とし控訴人を買主として締結されたものであり、被控訴人は売主たる右会社の債務を保証したものと認めるのが相当である。

ところで、財務保全振興会が本件土地を第三者に売却し、その所有権移転登記を完了したこと、控訴人が右会社に対し本件契約にもとづく債務の履行を催告したうえ昭和四七年四月一日右契約を解除する旨通告したことは当事者間に争いがない。

そうだとすれば、財務保全振興会は控訴人に対し、右契約解除にもとづく原状回復として控訴人から交付を受けた一〇〇万円とこれに対する交付の日である昭和四三年一〇月三〇日以降民法所定の年五分の割合による利息の支払をなすべき義務があるものであり、被控訴人は保証人として右と同一の義務を負担するものといわなければならない。

よって、本件控訴は理由があるから、原判決を取消し控訴人の請求を認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九六条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 菅野啓蔵 裁判官 渡辺忠之 小池二八)

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